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CD個人輸入顛末記

古い書類入れがあったので覗いてみたらなにやらカーボンレスの書類が出てきた。
それは3年前の2月付になっている「国際送金為替金等受領証書 Remittance receipt」だった。
郵便番号、31 400 TOULOUSE。名あて国、FRANCE。
送金目的、CDの個人輸入。

きっかけはそこから更に2年遡る。
1999年に見たエリック・ロメールの映画だった。
「恋の秋」。
登場人物たちが大団円の結婚パーティで踊るシーンのバックで歌われる歌が、映画を見てから2年後の2001年になって無性に聴きたくなった。もっともヒロインは花嫁ではなく、花嫁の母の親友、なのだけれど(笑)
(花嫁の母と、ヒロインであるその親友が娘のように可愛がっている若い女性もほとんど主役)

えー、とりあえずストーリーを語りだすと長くなるから映画についてはそれでおいといて、このCDを手に入れるため、まず「音楽」にクレジットされている「Claude Marti」を検索。
そこから、南フランス独自の伝統である「オクシタン文化」「オック語」に関する本やCDやグッズをそろえている店を探し当てた。幸いにもそのショップは、英語、フランス語、オック語の3ヶ国語がOKだった。

オック語は古くから南フランスの広い範囲で使われていた言葉で、全土が現代のフランス語に征服されるまではかなり盛んな言語だったといわれている。
現代の言語でいえば、フランス語よりむしろスペイン語やポルトガル語を連想させる。

実はこのクロード・マルティもまた、オック語やオクシタン文化を保存すべく、オック語の詩を書き、歌を歌い、またオクシタンに関する本も著しているという。(現代フランス語を否定しているわけでは決してなく、現に普通のフランス語の歌も歌っています。ただし、フランス語では「南仏独自の文化をもっとだいじにしてくれ!」みたいなメッセージソングが多いように思われます)

で、彼自身は1970年頃から音楽活動をしている大ベテランで、見た目もそれなりのおじさま(いや、間に「い」を挟んでもいいかも……)っぽいのだけど、音作りにあたっては比較的若い音楽家と活動を共にするなどしていて、ボサノヴァ調の曲やパーカッシヴな曲からフォーキーな曲、カントリー調、正調南仏民謡、などなど音楽的なふり幅もかなり広いお方である。実際、「恋の秋」に使われていた曲も、結構パーカッシヴなラテン・ビートがきいていたような記憶があった。
(まだ買ってはいないが、最新作を試聴したらなんとラップまでこなしてらした。凄い!)

そこでこの曲はマルティのCDの中でも比較的新しいものであろうと推理。そしてショップのリストの中から、当時いちばん新しい作品と思われた「Et Pourtant Elle Tourne」という作品を選び、注文。
送料込みで363フラン。(2001年当時はまだフランとユーロの過渡期にあった)海外宛ての支払方法を確認して申し込む。程なくして
「ご注文は承りました。為替でのご送金を確認次第発送しますので、送金よろしく」
という趣旨のメールが届く。

そこで近所の郵便局へ
「これこれの事情でフランスのトゥールーズへ、363フランの為替をお願いしたいのですが」
と話したら、局員のかた曰く
「フランで為替送金すると、
 お客さんのケースではものっすごい手数料がかかりますよ?
 ユーロにされれば手数料1000円ですむんですけど……」
(このものっすごい手数料というのが、
 送金額とほとんど同じくらいだったような記憶がある。
 また近所の郵便局も、アメリカ以外の外国への
 送金なんてしたことがないらしくて、
 いっしょけんめ仕事のマニュアルとにらめっこしつつの
 対応なのでした。お疲れさまです)
「わかりました。通販のサイトの方に、
 ユーロで送金できないかお願いしてみます」
……英語の通じるサイトが相手でよかったと思った。

なんとか英語で
「日本の郵便局と相談したら、フラン建てではCDがもう2-3枚
 買えそうな手数料をとられそうです。
 ユーロだとごく安くつきそうですので、
 ユーロで送金させていただけませんか」
とたどたどしくメールを書いて、送る。
翌日快諾の旨メールが届き、一安心。55.34ユーロの為替を送ってください、とのことであった。

無事為替での送金も終わり、1ヶ月ほど待たされた末、ようやく届いたクロード・マルティのCD!!
しかし届いた「Et Pourtant Elle Tourne」に「あの曲」は入ってなかった……

お目当ての曲は、えーい、と更におかわりした「Camin Del Solelh」と「Monta Vida」の合盤に入っていたとさ。
今度はショップの方も請求書メールに
「前回ちょっと送料をいただきすぎたようですので、今回まけておきました」
と書き添えて、ちょっとお代金に手心を加えてくれたり。(リピーター割引?)

でもオック語だか他のヨーロッパ語だかの感覚で「o」で終わる名前なのに「Mme.(マダム)」と書いてあったのを不思議に思ったらしい。
「あなた女性なのにどうして『o』で終わってるんですか?」と。

だから
「日本女性のファーストネームの伝統的なものに
 『ko』で終わるものがあります。
 近年生まれた方の間では時代遅れとされていて
 少なくなってきているのですが、
 我々またはそれ以上の世代の女性には
 かなりポピュラーですし、
 また世代にかかわらず、皇室の女性や、
 一部のかつて上流階級だった家にお生まれの方は
 伝統的に『ko』つきの名前をつけることに
 なっているようです」
と、またなけなしの英語で「子」つきの名前について解説までするはめになったのだった……

こんな英語、とてもじゃないけど口からはぺらぺら喋れないし、だいたい聞き取れない。会話ではなくメールでよかったとつくづく思う。
そして、英語が通じてよかったとも。フランス語じゃ辞書ありでもここまでの文章はとてもじゃないけど書けないっつーの。いまも愛用中のPocket Progressive Dictionaryに心からお礼を言おう。

さてその後なのだが、お目当ての曲だった「Monta-Vida」より最初に手に入れた「Et Pourtant Elle Tourne」のほうがCDプレイヤーにはよくかかっている。このアルバムの2曲目の「Solelh」という曲のアコギと歌のからみがめちゃくちゃ気持ちよくて、すっかり気に入ってしまったのだ。

それに「Monta-Vida」は確かに「あの曲」ではあったのだが、アレンジがなんだか映画のものと違ってて、正直ちょっと好みではなかったのだ……
「Monta-Vida」の「恋の秋」バージョンが聴きたいぞー!!!!

(マルティの名前はオック語読みではクラウディ・マルティですが、映画のパンフレットなどでフランス語読みのカタカナが採用されているため、この文章もそれに従いました)

しかし「Et Pourtant Elle Tourne」はいまどき日本のamazon.co.jpで注文できるそうだ!(ただし現在は品切れ)
わたしの苦労はなんだったんだろうとちょっとへなへなー。

Claude Marti chanteur et poete occitan
(クロード・マルティ氏について紹介されているページ。
 mp3およびRealAudioで一部の曲が試聴できます。フランス語なので注意)
Amazon.co.jp で「Et Pourtant Elle Tourne」を扱っているページ(品切れ中)
(イギリス経由での輸入だという点に少々驚き……)

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