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"music" と "song"

「いいミュージックは沢山あるけどもいいソングスは少ない」
1969年に大手レコード会社に就職して以来優れたアーティストを数多育て続け、現在はドリーミュージックの会長兼CEOである、新田和長氏の言葉である。
このセリフを「僕(ら)もすばらしい『ソング』の作り手を目指したい」という含みで引いているのが、BLUE AGE ORCHESTRAのコンポーザー&ピアニストの新田雄一。実は和長氏の息子でもある彼は、この言葉を「尊敬するレコードマン」の言ったこと、として紹介しているのだ。家族としてのみならずプロフェッショナルとして尊敬できる家族を持てるなんてある意味凄い……と思うのだが、名残惜しくも今回は言葉の「内容」に重点をおきたいので、新田父子にはこのへんで失礼させていただく。ありがとうございました~♪

その「ミュージック」と「ソング(ス)」の違いってなんだんねん。
こちらで勝手に推理してみると、とりあえず直訳すれば「音楽」と「歌」。
つまり音楽としての完成度を追究したものが「ミュージック」で、うたとして親しむことができるものが「ソング」じゃないかと解釈させていただく。

さて「いいミュージック」と「いいソング」は両立不可能なのか? そうではない、とわたしは考えている。
どちらか一点に集中するよりは数倍難しいかもしれないが、既に実現されているものだってあるじゃないかと。この広い世の中だから探せばかなりの数が見つかりそうだが、昨年夏にはじめてこの和長氏のセリフを見た時点で、わたしの脳裏に真っ先に浮かんだ「現実の例」が、CASIOPEAである。
おいおい、CASIOPEAって、一部を除いてインストゥルメンタルだろうが、ってツッコミがあっさりと入りそうだ。そのとおり。だが、ヴォーカルナンバーならずとも、CASIOPEAの作る曲の大半はかなり強い「ソング性」をもっているとわたしは思うのだ。
実際、なんだか歌いたくなる曲が多くないだろうか? 事実「PLATINUM」に入っていた「PRINCESS MOON」など、童話の世界の月でうさちゃんたちがちょんちょん踊っていそうなナンバーで、声域の足りないところをオクターブ下げてまで風呂で鼻歌に歌ったこと限りなし(笑) 「MAIN GATE」に入っている「SUPREMELY」のサビなんか、お気に入りの歌手がスキャットで歌うさまを妄想して「おお、こりゃええわ」なんてね。
そんな親しみやすさをもった曲たちだが、ではミュージックとしての完成度はどうなんだ、というと、これがまたまたヤバかったりするのが彼らの凄さ。親しみやすいメロディにだまされつつも「でもなんか他にはない響きがある……」と思って聴いていると、素人には思いつきそうにないコードワークが裏のツボをおさえていたりする。もちろん、それらを優れた作品として聴かせているのがメンバー達の確かな演奏によるものであることは、いうまでもなかろう。

という考えを昨年夏以降ずっと持っていながら blog に書かずにいたのは
「こんな素人考え、いいんかなあ」
という不安があったからなのだが、他でもない向谷実ご本人の blog に「インドネシアで CASIOPEAが人気者になった理由」について書いてあったのを読んで「これならイケそうだ」というわけで、今回トラックバックとともに(!)書かせていただくことにした。

向谷実の鉄道と音楽がいっぱい: ウソのようなホントの話1
なんと「Magic Ray」に無断でヴォーカルをのせて歌ったものがインドネシアで大ヒットしていたとは驚きである…… が、この「Magic Ray」も「歌いたくなる曲」のひとつであるのもまた事実。
既にこの向谷氏のエントリーへのコメントにも書かれているが、CASIOPEAを特集したテレビ番組でゲストヴォーカリストとして出演していた久保田利伸が「僕は『ASAYAKE』に勝手に歌詞をつけてうたっていました」という話をしていたのを思い出してしまった。「G~G~F#~~~」とメロディが下降して曲がマイナーっぽく転じるところに「だ~け~ど~~~~」…… って展開に爆笑したのを覚えている。

ということで、日本全国の優れたミュージックやソングの送り手たちには、どうか今度は「いいミュージックでもソングでもある楽曲」を目指して、我々リスナーをメロメロにしていただきたい。
実現不可能でないことは、既に証明されているのだから。

そう、新田雄一くん! あなたもですよ! あなたも!
って、最後にいきなり呼び戻すなよって? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……

コメント (2)

お、新田君、お父さんのことをそんなにステキに紹介してたとは。スゴイスゴイ。

「優れたミュージックにしてソング」かあ。
Reiaさんはお好みかどうかわからないけど、Yesにはけっこうそういう曲が多いかも。オススメは割とポップ路線なアルバム「90125」とか「BIG GENERATOR」かな。(それ以外のアルバムはちと曲が複雑だったり長かったりすることもあるんで)
SING LIKE TALKINGなんかも、サウンドの完成度にこだわりつつも「歌」としての良さも追求してるようで。

Reia:

雄一くん、あるところでは「所属レコード会社の会長から~と言われた」とも言ってますね(笑)
そこで雄一くんは「ミュージックはテクニック、ソングスは魂」ともおっしゃってますな。

YESはね、数年前に友達のすすめで「FRAGILE」を買って持ってます。たしかにおっしゃるとおりで、名盤なんだけど聴くのに体力がいる感じもしないじゃないっす。でも「ROUNDABOUT」は好き~。
「90125」って調べてみたらあの「Owner of a Lonely Heart」の入ってるアルバムなのねん。この曲1曲だけはなんか姉が83年末にNHK-FMでエアチェックしたテープに入ってたので覚えてますよ(いつも年末になるとその年の洋楽ベストヒットをノンストップでかける番組があって、姉は必ずエアチェックしてたのです)。

そしてSLT…… なんだか最近音楽関係の疑問がわくたび、解答例のどこかに必ず竹善さんが顔を出す気がしてならないわ(笑) こりゃまじでSLT、チェックせんといかんな♪

ところでさりげなく某サイトへのネタ提供してくれてません?(爆) 近日採用予定。THX!!

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